特定非営利活動法人 日本臨床歯周病学会
第13代理事長 石谷 昇司
令和7年4月より第13代理事長に就任いたしました石谷昇司と申します。
私は1998年に日本臨床歯周病学会へ入会し、2期4年間、副理事長として学会運営に携わらせていただきました。その際、常々感じていたことは、本学会を取り巻く環境に大きな変化が生じているということです。そして、その変化は、加速度的に進んでいるように思われ、今一度、本会の役割の再評価をする時期に来ていると考えております。
本会が発足した1983年当時はまだまだ歯周治療が一般に普及しておらず、抜歯して欠損補綴治療によって咀嚼機能を回復し食事をできるようにする「治療中心型」の歯科治療が主に行われておりましたが、十分に浸透していなかった歯周治療を広く啓発できたことは、本会が果たした大きな役割のひとつだったと思います。
現在の日本はすでに超高齢社会へ突入しており、歯科治療の需要の将来予想として、全身的な疾患の状況などもふまえ口腔機能の維持・回復をめざす「治療・管理・連携型」歯科治療の必要性が増すと予想されています。歯周病はただ歯を失うだけではなく、糖尿病をはじめ多くの全身疾患と関連があることが解明され、口腔機能が低下し虚弱となるオーラルフレイルを予防し、健康寿命を延伸する効果が期待されており、まさに「治療・管理・連携型」歯科治療の中心になる分野であると考えております。
本会の最大の特徴は、日本歯科医学会に認定分科会として認められた学会のなかでも数少ない開業医の歯科医師および歯科衛生士により構成された学会であることです。これらの特徴を活かし、多くの会員を臨床の現場において求められる活躍ができる歯周治療専門家として養成をすることが本会のこれからの重要な役割となると考えております。地域医療を担うのは数が限られた大学病院ではなく、我々開業医が中心になって行うべきであり、またその自覚が必要とされるからです。そのため、従来の認定資格認定事業に加え新たにハンズオンおよび歯科系学生が参加できるプログラムを開催し取り組む予定です。
また、引き続き国民への歯周治療の普及・啓発に関する事業にも力を入れていきたいと考えており、特に若い世代への啓発を行うために、企業と提携して市民公開講座を開催する予定でおります。
そして、国際交流も本会の強みであり、2025年はTAP(台湾歯周病学会)との交流も20周年を迎え、PSP(フィリピン歯周病学会)との提携もはじまります。2026年はAAP共催大会の主管を務めることもあり、海外学会との交流も活発にしていきたいと考えております。
もうひとつは歯周治療分野の評価向上です。歯周治療を保険診療収載のきっかけを作った本会は、独自に歯周治療実態調査を行ってきましたが、今後も会員の皆様にご協力いただき、関係各所とも連携し、開業医の学会から歯周治療分野の評価向上を発信していきたいと考えております。
これらの活動を含め、この2年間で中長期的な視点からより具体的に考えたロードマップを作成し、これら本会が果たすべき役割について具体的に提示したいと考えております。
これらはすべて、先人から受け継いだ本会の理念をもとに、魅力ある学会運営を行い、豊かで健康な国民生活の増進に寄与するべく邁進する所存でございますので、2年間どうぞよろしくお願い致します。